密教ヨーガ-タントラヨーガの本質と秘法-

-チャクラを活性化し神々の世界を感得するタントラヨーガ-

ヨガの入門書の定番とも言うべき本書は、数十年にわたってヨガのみならず「超能力開発」の入門書にもなってきました。というのも、本書は「チャクラの開発による超越的な感覚の獲得」を前面に出しているからです。

もっとも、本書で目指す超能力ではオカルトブームでもてはやされる念力や予知といった「現実的作用」の側面は重視しません。むしろ、「神々の世界」「自分の存在・非存在」を認識するためのものです。言わば「認識」世界を広めるための手段であり、その意味ではかなりストイックな部類に入るとも言えるでしょう。

超能力というと、単に人間の力を超えた不思議な能力を発揮するという意味にとられがちですが、シッディは、実存する神の世界に通じ至って生ずる力といったほうがよいでしょう。
シッディを達成することによって、私たちは、実存する神霊の世界とその働きに、親しく接することができるのです。
このような神霊の世界が実際に存在するということを無視して、頭の中だけで観念的に神の世界をえがいて信仰してみても、しょせんは机上の空論にすぎません。
さまざまな霊の世界、神々の世界が実存することを感得してはじめて、私たちは絶対者である最高の神と一致する世界に至ることができます。真の無上の悟りの境地に達することができるのです(pp22-23)

本書における超能力は、あくまで「神霊の世界を知ること」「神の実存に接し感じること」を目的としています。ですから、その「手段」であるチャクラの覚醒にしても、神的な背景、イメージのもとに行われる傾向があります。
一言で言うと「宗教的」なんですね。タイトルからして「密教」ですから、当然といえば当然ですが。神、霊といった一種の(意思を持つ)人格的な存在になじめない人には、ややついていけない部分が多いかもしれません。

実際の修行体系としては、かなり慎重に順を追って進んでいく内容になっています。最初の方のヨガのアーサナはさっさと飛ばして瞑想に入りたい、という人もいるかと思いますが、ここをしっかりやることこそが「チャクラを覚醒させる土台」を築くことにもなるはずですので、がんばりましょう。
全身の「エネルギーの流れ」が乱れた状態ではうまくいかないのは、仙道もヨガも同じです。

メインとも言うべきチャクラを覚醒させる修行は、イメージを思い描きながらの瞑想が中心になります。ろうそくの炎に意識を向けたり、守護神やチャクラのイメージで瞑想したり、とインド的というか宗教的な「神秘行」の雰囲気たっぷりの内容ですね。
ただ、こうした瞑想中心の行だと「体の中で目覚め燃え上がるパワー」をすぐには実感しにくい場合もあり、途中で投げ出したくなるかもしれません。「宗教的なもの」にどれだけ「想い」を致すことができるか、「神」を感じ信じることができるか、が「密教ヨーガ」を続けられるかどうかの分岐点になるのでしょう。

後半では、著者自身のクンダリニー覚醒体験や「研究」成果が紹介されています。著者のお母さんも、チャクラが目覚めた「超能力者」だったようですね・・・

密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法

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