戻る投資の王道 実践編 [通貨証拠金取引]株式外貨

外貨FX−年50%の好金利と為替変動の罠

年利回り年50%の金融商品。銀行預金の金利がほぼゼロの超低金利が続くせいか、広告でこのような「好金利」を謳う金融商品を目にするようになりました。その商品とは、外国為替証拠金取引、略称FXです。

このFXは、口座に一定の証拠金を預けるとその6-100倍(通常10倍程度)相当の外貨を取引できる、というもの。高金利通貨を買うと、ほぼゼロの円との金利差に相当する分(通常は円)を「スワップポイント」として受け取ることができます。で、豪ドルやニュージランドドルのような金利が年5%程度の通貨を「10倍買い」すると、「証拠金に対する実効金利」が年50%程度になるんですね。

たとえば、ある業者では10000豪ドル(約80万円相当)の取引に8万円の証拠金が必要です。そして、10000豪ドルを買った場合のスワップポイントは1日110円程度。仮に、1年間この豪ドルを買った状態(豪ドル買いポジション)を維持すると、約4000円のスワップポイントが得られ証拠金に対しては「年50%の利回り」となるわけです。
業者によっては、2万円で1万豪ドル、さらに10000英ポンドが買えますから、このスワップポイントによる実効金利はさらに上がります。特に英ポンドの場合、10000ポンドに対するスワップは1日240円以上ですので、2万円で1万ポンドを買い、1年間維持した場合のスワップポイントは実に88000円(利回り年440%)程度にもなります。

と、ここまでで終われば「すさまじくおいしい話」なのですが、当然終わるわけはありません。外貨には、金利以上に損益に影響を及ぼす「為替変動」という要素があるからです。

たとえば、豪ドルの場合、先月末には1豪ドルが約80-81円でした。それが、今月中旬には77円位になり、また80円前後まで戻してきています。つまり、この1ヶ月で約5%の変動があったわけです。これは、1年分の金利に相当する変動幅ですね。まあ、この1ヶ月は「下げてから戻す」相場でしたから、先月下旬に買って今売れば、ほぼ為替差損もなく金利分を手にできる……というのはおそらく無理です。少なくともFXで証拠金をフルに利用していた場合は。
というのも、FXには保有する外貨の評価損が一定以上になると、追加の証拠金を求められる「マージンコール」、さらには強制的に決済されて損が確定する「強制ロスカット」があるからです。このロスカットは、証拠金取引が「損をしても証拠金で補える」ことを前提とする取引である以上、当然ですね。損が拡大すれば、「実質的に預けている証拠金」が目減りするわけですから。
通常、マージンコールや強制ロスカットは、評価損が25-50%に達すると発動されるので、証拠金の10倍相当の外貨を買っていれば、5%の値下がり(約50%の評価損)には耐えられないのです。仮に、最終的には買値に戻した場合でも、取引中に一時的であれ評価損が一定以上に拡大すればだめ。

このように、外貨取引、特にFXでは為替変動が金利よりもはるかに大きな影響を与えます。金利は年2-5%ですが、為替は1日1%、1週間で5%動くことも珍しくないからです。長期的に見ても、「下げてから戻す」「上げてから戻す」と「結局は同じくらいになる」とは限りません。為替は長期的に下がり続けたり上がり続けたりという一定の傾向(トレンド)を示すことが多く、このトレンドに反した取引をすると、損がどんどん膨らむことになります。
この損は金利差が大きければ長期的には金利で補える場合もありますが、一度トレンドが発生するとかなり急な値動きになることも多いので、FXで無理にトレンドに反したポジションを維持し続ければ、すぐに破綻してしまうでしょう。

以上のことから、「好金利」狙いでFXをやるのは、少なくとも年50%だの30%だのという無謀なスワップポイント狙いでFXをやるのは無理、と言えます。実際、本来FXは比較的短期の為替変動で大きな利益を狙ったり、外貨建て取引を行う人が為替変動の影響を避けるためのヘッジ手段(アメリカに米ドル建てで物を売った人が、受け取り時点でのドル安リスクを回避するために「米ドル売り」ポジションを持っておくなど)として利用するのに適した商品です。FXで短期の為替変動に乗れば、1、2週間で資金を倍にすることも可能です。また、逆に1、2週間で全額を失うことも。

このような「勝負」に出るのではなく、落ち着いて外貨の好金利を享受したい、という場合は外貨預金や外貨MMFが適しています。いずれも、外貨を円で直接買うものでFXのように証拠金の何倍もの取引(レバリッジ取引)は出来ませんが、その分落ち着いて取引できますし、取引単位が小さいので気軽に外貨を買い増すことが出来ます。極端な話、外貨預金なら毎日ジュース一本我慢してその分で1米ドルずつ買っていく、などということもできるのです。外貨MMFは、取引単位はやや大きくなりますが、金利が高め(ただし、外貨ベースの元本保証はなし)なのが特徴です。
ただし、外貨預金や外貨MMFでは、為替手数料に注意が必要です。特に外貨預金では、1豪ドルを買うのに1円、売るのに1円かかる場合が多く、それぞれ2円かかる銀行すらあります。仮に往復4円だとすると、それだけで5%、1年分の金利は吹き飛ぶわけですね。時々マネー雑誌に銀行が「年20%の好金利外貨預金」という類のキャンペーン広告を載せていますが、あのような広告手法には疑問を感じざるを得ません。大抵は1−3ヶ月預金のキャンペーン金利なので、実質金利はマイナス、良くてもほぼゼロになります。つまり、為替変動がなくても金利を受け取るどころか、手数料で損をするのですから。

ネット銀行の中には、米ドル往復50銭、豪ドル往復1円、という銀行もあるので、手数料を抑えたければこういった銀行を利用するのも手でしょう。また、まとまった資金があるのなら、為替手数料が安いFXを外貨預金感覚で利用する手もあります。1万豪ドルを買うのであれば、口座にその分の現金(80万円)を入れておくのです。つまり、レバリッジをかけない現金取引をするわけですね。まあ、そこまでいかなくても、大抵はレバリッジを2倍程度に抑えておけば(口座に取引する外貨の半分程度の残高があれば)、大丈夫でしょう。
FXは取引単位が大きいのが難点ですが、手数料が安い、24時間取引の上に多様な注文方式があるのでリスク管理を行いやすい、また業者によってはスワップポイントが直接口座に円で入金されるので、外貨のポジションを維持している間もスワップポイント分を引き出すことが出来る、という利点があります。大口の取引では、外貨預金より有利になる場合もあるでしょう。

最後に、外貨預金やFXでは、業者の選定も重要です。外貨預金は預金保険の対象外ですし、FXも業者の経営状況によっては預けた証拠金などが返還されなくなる可能性もあります。業者を選ぶ際は手数料などの取引条件だけでなく、業者の経営状況や顧客資産をどのように管理しているか、といった点にも注意する必要があります。

以上、去年から外貨取引を始めた外貨初心者による「外貨取引スタートメモ」でした(^^;。


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