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抗がん剤の微小カプセルでがん治療

がん細胞を殺す抗がん剤は、他の細胞にも作用するため強い毒性と副作用を持っています。食欲の低下や吐き気、脱毛、免疫力の低下……体調が悪化している末期がん患者が抗がん剤治療を続けようとすると、抗がん剤の毒性・副作用が甚大な「追い討ち」になってしまうんですよね。

こうした抗がん剤の毒性と副作用を抑えるために研究が進んでいるのが、抗がん剤をナノサイズの微小カプセルに入れてがん細胞の場所で放出する微小カプセル方式です。がん細胞にのみ入り込む大きさになっている微小カプセルで抗がん剤を送り込むことで、がん細胞に選択的に効果を及ぼすことができます。

微小カプセルによる抗がん剤治療は、既に昨年から創薬ベンチャー企業ナノキャリアが海外での治験に入っています。こちらの成果が検証され人での治療効果がわかってくるのはまだ少し先になりそうですが、東京大学の片岡一則教授らはマウスの動物実験で微小カプセルの抗がん剤が実際にがん細胞に入って効果を発揮することを確認し、その成果が2011年1月6日に「サイエンス・トランスレーショナル・メディスン」電子版に掲載されたそうです。

抗がん剤の被害を少しでも抑えようと、これまで成分の調整や漢方薬を始めとする「抗がん剤の副作用を軽減する薬」との併用などさまざまな取り組みが行われてきました。これらの取り組みは一定の成果を挙げてはいるものの、やはり「体内で生じた自分自身の細胞」であるがん細胞が相手だと、限界があったのも事実でしょう。
微小カプセル方式は、「他の細胞にも影響してしまう」という根本的な原因を取り除くものだけに、実用化されればがん患者と抗がん剤の関係を一変させるものになるかもしれません。