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脳細胞(大脳新皮質)も再生の可能性か

従来、いわゆる脳細胞、大脳新皮質の神経細胞は大人になると一度失われれば再生しない、とされてきました。事故などで大脳新皮質が傷つけられたり認知症などの病気で障害が残ると、回復は難しい。それがいわば常識だったのです。

しかし、実際には大脳新皮質の神経細胞も再生されているのでは、という研究結果がまとまったそうです(大脳新皮質に新しい神経前駆細胞を発見)。人間ではなく、ラットですが、大脳新皮質の表面に神経細胞になりうる細胞が存在し大脳内の血液の流れが阻害される状態になるとある種の神経細胞が生成されるようになったとか。

人間に応用すると、薬剤によって脳細胞の再生が可能になり、てんかんや認知症などの治療が可能になるかもしれない、とのこと。「脳卒中が原因で起こるてんかんやそれに付随する認知機能の低下を防ぐ治療法の開発につながる」としたら、それは一つの希望でしょう。

ただ、意識や認識の場合は、神経細胞があること、ではなく神経細胞のネットワークとして機能するはずなので、神経細胞を再生させることが出来てもそれで「元通り」にはならないんですよね。
特に、認知症の場合は、認識の基準となる情報処理のネットワークをどうやって再構築するかが問題になりそう。また、人工的に大脳新皮質の神経細胞を増やすと言うことは、「自分の意識」とは何か、という問題も引き起こすかもしれません。

人工的に再生された大脳新皮質による認識や意識は、「それまでの自分」と「同じ」なのか。認識という「機能」と自分という自己意識は、切り離せるのか。
再生医療の発展で神経細胞の再生が本格化すると、古くから問われてきた「私とは何か」という根源的な問題に改めて向き合うことになるのかもしれません。